イメージソリューション

デザイン成果物に説明書を付けるべき理由

デザイン成果物には説明書を付けると、クライアントにも自分にも多くのメリットがあります。私もデザイナーとして、最近では成果物を提出する際に必ず簡単な説明書を付けるようにしています。その経験から、説明書を付けることで得られる効果についてお話ししたいと思います。

この話で伝えたいこと

  • 説明なしではデザインが制御不能になる
  • 説明を考えることで自分の成果物の矛盾に気付く
  • 説明があることでクライアントの評価基準が明確になる
  • 説明相手を意識することで視野が広がる

過去の話

デザイナー目線だけでものづくりをしていた

デザイナーとして駆け出しの頃、とにかく見栄えの良さを追求して、トレンドを取り入れたデザインを作り、説明もなくそのまま提出していました。周りの仲間からは良い評価を受けたものでも、クライアントは何を評価すれば良いのか分からず、想定外の指摘を受けて修正を強いられることが多々ありました。例えば「テキストの一字一句が違う」とか「自分の好みとは違う」とか「もっと色々見てみないとわからない」といった意見です。時には全てやり直しということもあり、正直なところ落ち込んだこともありました。

説明下手でうまく言語化できない

勢いだけで作ったデザインの説明を求められる場面では、「清潔感を持たせました」「スッキリしたデザインです」「シンプルにまとめました」といった浅い言葉しか出てこず、自分でも恥ずかしく感じることがありました。当時は説明のための準備すらしていなかったため、クライアントに納得してもらうのが難しかったのです。

※ちなみに、今でも口頭での説明は得意ではありません。

気づいたこと

自分とクライアントの視点は違っていて普通

クライアントは依頼の段階でぼんやりとしたイメージを持っていることも多いです。そのため、デザイナーが良かれと思って作ったデザインがそのイメージと違っていた場合、「思っていたのと違う」と感じられてしまいます。よほど初見で好印象を与えられない限り、クライアントに受け入れられるのは難しいものです。

デザインはただの表現ではなく課題解決のための手段

デザインには「この商材をこういう消費者に届けたい」といった目的があり、それを達成するために工夫することが求められます。ただトレンドを取り入れただけのデザインでは課題を解決できる可能性は低く、きちんと説明できる理論が必要になります。

デザインの見た目だけでは伝わらない

最初にどれだけ打ち合わせをしても、完全に同じイメージを共有することは難しいものです。クライアントに説明なしでデザインだけを共有しても、デザインに込めた意図を理解してもらうのはやはり難しいのです。

コントロール不能になる

一度クライアントから指摘を受けると、その修正に従わざるを得ません。自分の中で壮大なストーリーがあったとしても、それを説明して理解してもらえなければ、デザインの意図が伝わらず、結局やり直しになることもあります。この流れで主導権がクライアントに渡ってしまうと、思わぬ方向に進んでしまうこともあります。

簡単でも説明資料をつくる

資料に時間をかけなくても良い

提出物の制作に加えて説明資料を作るなんて面倒だと思うかもしれませんが、体裁を整えたプレゼン資料を作る必要はありません。特に提出を求められていない説明資料は、形式にこだわらず、自分の言葉で相手に伝わるレベルで十分です。なにも説明のない提出物は、クライアントにとっては味付けのない料理のようなものかもしれません。

クライアント目線で分かりやすく

専門用語はできるだけ使わないように心掛けています。例えば「アクセシビリティの観点でコントラストに配慮したデザイン」といった説明は、専門知識のないクライアントには理解しにくいです。「視覚の多様性に配慮したデザイン」くらい平易に言い換えることで、相手にも伝わりやすくなります。

要点を絞った説明に

説明資料は簡潔にまとめることが重要です。ポイントや結論を明確にし、補足説明は必要最低限に留めましょう。長文でぎっしり書いた説明文や関連情報を詰め込みすぎると、クライアントはきっと混乱してしまいます。箇条書きにするくらいがちょうど良いです。

説明資料を作ると気付くこと

説明文を考えることで矛盾に気づく

説明文を書いていると、つい良く見せようと格好つけてしまうせいか、自分のデザインが説明内容に追いついていないときがあります。説明文を作成することで、自分のデザインを客観的に見返す機会が得られます。説明に恥じないクオリティの成果物かどうか、再評価してみましょう。

自問自答でブラッシュアップ

軽い気持ちで「インパクトのあるビジュアルを活かすキャッチコピーのあしらいにしました」と説明を書いたとしても、本当にそうなのか自問自答してみましょう。自分でも違和感を覚えたら、クライアントも同じ疑問を持つ可能性が高いので、成果物や説明文を修正するべきです。説明文はできるだけ抽象的な表現は避けて、例えば「視線が自然にビジュアルに集まるよう、装飾要素を極力削ったキャッチコピーのデザインにしました」のような具体的な表現にしたほうが伝わりやすいです。

クライアントの意識を誘導する

コンセプトやポイントを伝えて評価基準を与える

デザインの説明では、コンセプトやポイントを簡潔に伝えることで、クライアントがデザインの評価をするための基準ができます。評価の軸を与えることで、クライアントは何について感想を述べるべきかが明確になり、想定外の指摘を受ける可能性を減らすことができます。

クライアント(決裁者)の立場を意識する

デザイナーとして説明する際、どうしてもクリエイティブな話題やトレンドを説明しがちですが、クライアントの立場によっては「あまり重要ではない」ことかもしれません。例えば、エンジニアは細部の数値や整合性に関心がありますし、営業や経営者はコストや結果に関心があります。相手の属性を見極めて、最適な説明を考えることが必要です。(これがなかなか難しいのですが)

視野が広がる

広い視野で要件を把握して新たな提案

デザインとその説明は、「この成果物は誰が誰のために作ろうとしているものか」を意識することで、クライアントの求めるものに近づけることができます。また、視野を広げることで、要件にない気付きや新たな提案が生まれることもあります。このように、説明書を作ることはクライアントとの信頼関係の構築にもつながると考えられます。

自分のメリットに

説明書を作ることで、自分のデザインを自分で再評価し、様々な属性のクライアントを意識することで、制作物のクオリティを向上させ、より高いレベルの提案ができるようになります。この作業を習慣化することで、制作を始める前に少し深く考えることができ、結果的に制作時間を短縮することにもつながるでしょう。

ちょっと息抜きにPinterestを見始めると止まらなくなる

古田 X@Frencel_is

デザイン事務所勤務を経てフリーランスに。その間、独学で3DCGや動画編集、Webデザインのスキルを身につける。その後フレンセルに参加。Webデザイナーとして活動を続ける傍ら、写真撮影やレタッチのスキルも身につける。最近イメージソリューションへ移籍してwebデザインのほかビジュアルデザインも覚え中。

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